国は2016年、虐待や貧困など様々な事情で生みの親と暮らせない子供たちを、施設ではなく「里親」など一般の家庭で育てていく方針を示しました。
「里親」というと、子供を自らの戸籍に入れて法律上の親子となる「養子縁組」をイメージするかもしれませんが、形はこれだけではありません。
「養育里親」は、養子縁組せずに子供を家庭に迎え入れ、一定期間育てます。期間は、週末だけや長期休みだけといった短期間から、子供が自立するまでの長期間など様々です。約9万円の里親手当と約5万7000円の生活費が毎月支給されます。
里親制度の普及から里親家庭のサポートまでを一貫して行う秋田県の施設を取材しました。
2025年10月に秋田市に開設された「県里親支援センターTOMONY(トモニー)」は、全国で児童養護施設などを展開する「社会福祉法人みその」が、県の委託を受け運営しています。
センターには、社会福祉士や精神保健福祉士の資格、保育士の経験を持つ職員が常駐し、里親になるための研修から養育を必要とする子供とのマッチング、実際に生活が始まってからのサポートまで、ワンストップで行っています。
県内には様々な事情で生みの親と暮らせない子供が約200人いますが、里親などと生活している子供の割合「里親委託率」は、2026年3月末時点で23.7%にとどまっています。国が2029年度までに目指す数値(乳幼児75%以上、学童期以降50%以上)には遠く及ばず、センターは里親について広く知ってもらう取り組みに力を入れています。
県内の飲食店の協力を得て2025年12月に始めたのが、小規模な説明会「里親のCOTO(こと)」です。参加者は会場となる店の料理を楽しみながら、里親制度や県内の実情などに耳を傾けます。
秋田県里親支援センターTOMONY・冨樫美和子センター長:
「里親は自分たちとは違う世界という人が多いが、実はそうではなく、里親が必要な子供は社会全体で見守る必要がある子供だと思う。里親というワードが全然自分の生活になかった人に、少し引っかかりを持ってもらうために『里親のCOTO』を開催している」
思いに賛同した企業は「里親サポート企業」に登録し、割引サービスや従業員への啓発活動などで里親制度を支援する輪が広がっています。
秋田県里親支援センターTOMONY・冨樫美和子センター長:
「みんなで子育てしていく文化が秋田の中でできるような形を、センターがとらせてもらいたいと思っている」
県内で支援・理解が広まりつつある里親制度。当事者はどんな思いで生活しているのか、里親として子育てする女性に話を聞くことができました。
県中央部に住み、4年ほど前に長期の養育里親として里子を迎え入れた女性。コロナ禍で自分の人生を見つめ直し、「子供たちの力になりたい」と考えたことがきっかけでした。
女性は、「ガチガチに固まっていた子がほぐれてきて『こんなことできるんだ実は』と、今まで隠されてきたものが現れてくるのを見られるのが楽しい」と、里子との生活の中での喜びを話してくれました。
「一緒に靴を買いに行った。『好きなもの持ってきていいよ、選んでいいよ』と言ったら、こわばって固まってしまった。自分で選ぶことをあまり体験してこなかった子だった。自由に自分で選択すること自体の練習が必要だったところがちょっと大変だった」と、里子と暮らし始めた当初は戸惑いもあったと振り返る女性。
しかし、共に暮らすうちに「相手の気持ちを考えて、どうしたらサポートできるか、相手の気持ちになれるかを探る活動が自分を成長させてくれた」と話します。
女性は1人で里子を育てていますが、手当や生活費の支給など金銭面の支援のほか、手厚いサポート体制により、安心して子育てできているといいます。
「TOMONY、児童相談所の職員、心理士、里親支援員とチームで里子を育てるイメージ。里親の互いの苦労話や『こういう時はこう解決した』と話し合う場もあるので、逆に実子を1人で子育てしている人たちよりも充実している部分があるかもしれない」と女性は話します。
一方で、制度の広がりには社会の理解が欠かせません。
女性は「里親というと『すごいことをしているね』と言われるが、そのことが逆に引かれているというか孤独感を生む場面がある。特別なことではないから『そうなんだ』くらいの雰囲気や制度・環境になってくれたら孤独感から解放されるのでは」と考えています。
少子化が急速に進む中、子供はまさに“社会の宝”です。子供たちを社会全体で育てていくために、里親制度について一人一人の理解や協力が求められています。
05月19日(火)18:30