人口減少が進む町で、地域の人たちのよりどころを目指して弁当や総菜を販売する女性の思いを取材しました。
秋田県能代市松長布地区の駐車場の一角に、ひときわ目立つ青色の店舗を構えるのは、弁当や総菜を販売する店「お弁当屋さんnicon」です。
店を経営するのは、八峰町出身の石田香奈さんです。
料理が得意だった父親の影響で昔から料理が好きだったという石田さんは、17歳の頃から約5年間、能代市内の飲食店で働き、調理や接客などを学びました。
その後結婚、出産し、保険会社での勤務を経て2024年8月、31歳で夢だった自分の店をオープンしました。
約300メートル先に小学校があるこの場所に店を開いたのには、理由があったそうです。
お弁当屋さんnicon・石田香奈さん:
「ここは学校のすぐ近くで、子供たちが行き交う場所。今の時代、子供たちが集まる場所が全然ないと思い、自分がその場所になっても良いのではないかと思った」
地域の子供たちが気軽に立ち寄れる場所を目指して始めた「nicon」の店名の由来を石田さんが教えてくれました。
お弁当屋さんnicon・石田香奈さん:
「笑っていれば何とかなると思っていて、笑顔が大事だとずっと思って生きてきたから、にこにこの『nicon』笑顔を大事にと思って名付けた」
そんな「nicon」では、季節の食材を取り入れ、どこか懐かしい家庭の味が楽しめるメニューが日替わりで提供されています。
寒くなる秋冬限定の「ホルモン煮込み」は、じっくり煮込んだ豚ホルモンがとても柔らかく、高齢の常連客にも人気の一品です。石田さんの出身地、八峰町で生産されたネギが薬味として添えられ、豊かな味わいに仕上がっています。
また、開店当初からの人気メニュー「鶏の唐揚げ」は、アレルギーのある人にも楽しんでもらいたいと、卵や小麦粉は使用せず、衣には片栗粉が使われています。
吉方桃花アナウンサー:
「肉が柔らかくてジューシー。衣がサクッとしていて、ニンニクが良いアクセントになっている」
「nicon」を訪れる客の中には、近くの学校や塾に通う子供たちのほか、石田さんと話をするために立ち寄る地域住民も多くいるそうです。オープンから1年が過ぎ、「nicon」は幅広い世代の人たちから愛される店となりました。
一方で、店がここまで来るには苦労もありました。その一つが9月に松長布地区を襲った大雨です。
お弁当屋さんnicon・石田香奈さん:
「雨がすごく降ったと思って、心配で朝早くにここに来たら、川のような感じになっていた。中に入ったら水が床にあって、営業できる状態ではなかった」
浸水被害を受けた店の片付けで、一時休業せざるを得ませんでした。
また、小学生3人を育てる母親として、仕事と育児の両立にも苦心したと話します。
お弁当屋さんnicon・石田香奈さん:
「子供たちと遊びに行く機会が減ってしまったので、どうやってカバーしていこうかなと考えながら、一緒に店で料理するなど工夫しながら一緒に何かやるという時間を少しでもつくるようにしている」
子供たちとの時間を大切にしながら、地域住民のよりどころになりたいと店を切り盛りする石田さんが、今後の目標を語りました。
お弁当屋さんnicon・石田香奈さん:
「子供たちが地域的にも少なくなってきていて、お父さんお母さんが忙しくて帰りが遅くてという子もいるので、そのような子供たちのために『子ども食堂』のような活動を今後できるような自分になりたい」
石田さんは今後も「食」を通して、幅広い世代の人たちの居場所をつくり出そうと歩みを進めます。
10月24日(金)16:30