カメラのファインダー越しに見えた世界をアートに。写真で捉えた何気ない風景をメルヘンタッチに表現する女性を紹介します。
10月15~19日まで秋田市で開催された秋田公立美術大学の卒業生7人によるグループ展『ななてん』。会場には、ガラスや木工、絵画などそれぞれの個性が光る作品が並びました。
丸いキャンバスの上に広がる不思議な生き物たちの世界。制作したのは、2024年から『ななてん』に参加している秋田・湯沢市出身の高山美紀さんです。
2018年に秋田公立美術大学を卒業後、地元の湯沢市でデザインなどの仕事に携わりながら、趣味で始めたカメラで身近にある自然や風景を撮影してきました。
小さな頃から絵を描くことが好きだった高山さんは、次第にファインダー越しに見える植物たちの日常を想像し、イラストで表現するようになりました。
高山美紀さん:
「幼い頃に天井のシミが顔に見えたり、空の雲が食パンに見えたりするような感覚で、撮った風景も作品にしているような感じ」
『足下の宴』と題した作品は、実家の果樹園で撮影したコケからインスピレーションを受けたもの。「静かな果樹園の中で、まるでコケたちが揺れながら踊っているかのように見えた」というその時のイメージを、高山さんはアクリル絵の具と色鉛筆を使い、ぬくもりのあるタッチで描きました。
高山美紀さん:
「元が写真であり、植物とか自然のものであるので、あまり擬人化し過ぎてもすごくかけ離れてしまう。あまりキャラクターになり過ぎないように表現することを、作る上で意識している」
それぞれの作品には“しおり”が添えられていて、インスピレーションの元となった写真やポエムを見ながら作品の背景を感じることができます。
ポエム『春待つ布団に包まれて』:
「アスファルトが顔を出し 眠っていた草花たちも少しずつ目を覚ます頃 産毛を生やしたパッチワークの布団をかぶって まだもう少しだけ夢の中にいさせて」
高山さんは、季節の移ろいを表現することに魅力を感じていて、植物たちの静かな息吹を小さなキャンバスに散りばめます。
イラストの他にも、日常の音をテーマにしたポスターやろうそくを染み込ませて加工した光に透ける写真集など、高山さんの創造ジャンルは一つにとどまりません。
2024年に高山さんを『ななてん』にスカウトしたリーダーの津曲由美さんも、そのセンスに刺激を受けています。
津曲由美さん:
「高山さんは毎年『ななてん』を見に来てくれていて、ちょこちょこ話していたが、写真を使ったメンバーが今までいなかったので『一緒にどうですか?』と。デザイン的な作品やイラスト的な作品もあり、こういうこともできるんだなと幅が広がる感じ」
作風はまだまだ模索中と言いますが、2025年に地元の湯沢市から秋田市に移り、新たな環境で創作意欲は高まるばかりです。
高山美紀さん:
「ことし制作した作品をアップデートしたものとか、別のパターンを作りたいと思っている。今は秋田市に住んでいるので、日常の中で感じたものとかを作品にしてみたい」
高山さんが作り出すファインダー越しのもう一つの世界。次はどんな世界がキャンパスに描かれるのでしょうか。
10月22日(水)20:00