秋田が誇るブランド鶏「比内地鶏」。ふるさと秋田で比内地鶏を食べる文化をもっと広めたいと、Aターンして飲食店を開業した男性の思いに迫ります。
秋田市南通に3年前にオープンした「比内地鶏串 Sot l'y laisse(ソリレス)」。この店を経営する店主の中島康博さん(36)は、大学進学を機に上京し、卒業後、都内の飲食店などで働いてきました。
結婚して4人の子供を授かると、子育てしやすい環境を求めてふるさとに帰ることを決め、勤め先で扱っていた経験から比内地鶏を提供する飲食店を開業しました。
比内地鶏串 Sot l'y laisse店主・中島康博さん:
「秋田の人はあまり比内地鶏を食べない。みんなに『今月、比内地鶏食べた?』と聞いても、食べてない人がほとんどだと思う。もっと比内地鶏の文化を浸透させたい、秋田でもっとおいしい焼き鳥を提供したいと思ったのがきっかけで、秋田に戻ってきて店を開業した」
店の自慢は、その日にさばいた比内地鶏を提供していること。中島さんや従業員が直接加工場に行き、新鮮な比内地鶏を仕入れて調理しています。
中島康博さん:
「秋田で営業している強みが生産地に近いこと。県外の客が多いので、秋田まで来て食べる価値があるのは鮮度かなと思う。毎日、比内地鶏を店でさばいていて、週2回は工場に取りに行って、朝びきを提供している。かなり鮮度にこだわった店にしている」
新鮮な比内地鶏のコース料理が楽しめる夜の営業に加えて、中島さんは形態を変えた昼の営業も行っています。
昼の時間帯に店名を変えて営業している「比内地鶏白湯ラーメンSORA」では、比内地鶏からとった濃厚な鶏白湯スープに、比内地鶏のモモ肉とムネ肉2種類のチャーシューを乗せたラーメンを味わうことができます。
店を離れると4人の子の父親に戻る中島さん。そんな中島さんが2年前から行っているサービスがあります。
「ファミリータイム」は、店の営業時間前に、予約客に貸し切りで比内地鶏料理を楽しんでもらおうと始めました。クラウドファンディングで資金を集め、小学生以下の食事代は無料にしました。
子供を連れていても周りに気を遣わずにゆっくり食事を楽しんでほしい。そんな思いから始めたファミリータイムを、中島さんは子供たちのためにも続けていきたいと話します。
中島康博さん:
「ファミリータイムで小学生とか幼稚園の小さい子供が来てくれて、比内地鶏を食べると『おいしい』と言ってくれる。それを将来ちゃんと覚えていて、秋田に帰ってきたら『比内地鶏食べたい』とか『秋田は比内地鶏おいしいのがあるよ』と県外に出たときに他の人に言えるような環境をつくって、秋田に戻ってくる子供が増えればいいなという思いで、ファミリータイムを行っている」
比内地鶏にこだわる中島さんの店に9月、新しい仲間が加わりました。2025年5月に惜しまれつつ閉店した秋田市の料亭「濱乃家」で料理長を務めていた本藤孝洋さんが、中島さんとともに働いています。
元料亭濱乃家の料理長・本藤孝洋さん:
「すごい楽しいです、いろいろ覚えることがあるので。接客も初めてですし、濱乃家では客の前に出ることはなかったので。比内地鶏を解体して串打ちをして焼くという技術を早く習得したい。それから、今まで経験した和食料理の技術をコラボレーションして、より良いものを作っていけたらと思う」
新しい仲間も加わり、夢も大きくなりました。2026年の春にはJR秋田駅前に新店舗をオープンする計画が進んでいます。
中島さんの活動の根底にあるのは、比内地鶏をより多くの人に届けたいという思いです。
比内地鶏串 Sot l'y laisse店主・中島康博さん:
「比内地鶏は扱いが難しくプロ向き。扱いをちょっと間違えるだけで固くなったり、おいしくなくなる。それでおいしくない鶏を食べていた人にも、うちの比内地鶏を食べれば『おいしいね。比内地鶏ってめちゃくちゃおいしいね』と思ってもらえるような比内地鶏を提供することを心に刻んで、お客さんに対して鮮度がよくおいしい比内地鶏を提供していきたい」
子供から大人まで、多くの人においしい比内地鶏料理を届けたい。中島さんの挑戦はこれからも続きます。
比内地鶏串 Sot l'y laisseでは、10月からコースを増やし、より比内地鶏料理を堪能してもらえるようにするということです。
09月19日(金)19:00