農業の担い手不足の解消や生産規模の拡大などに向け、秋田県内の大学・自治体・企業が農業用の小型無人機「ドローン」を使って種もみをまく実験に取り組みました。目指す姿は収穫まで田んぼの中で作業しないコメ作り。産学官連携の実験の様子や今後の展望を取材しました。
コメ作りの実験をしたのは、秋田県立大学と大仙市、それに大館市の機械メーカー・東光鉄工です。
実験は5月5日に公開され、農業用のドローンで種もみをまきました。
ドローンは東光鉄工が製造し、人工衛星「みちびき」から出される位置情報のサービス「CLAS」を受信できるもので、国内初です。位置情報の誤差が、一般的なGPSが数メートルから数十メートルなのに対し、CLASは最大で十数センチ程度で抑えられます。
東光ホールディングスの伊藤均社長は「非常に正確に種や農薬をまくというメリットがある。田んぼは一人一人の持ち物だから、自分の田んぼにまいても、隣の田んぼに間違えてまいてはいけない。これは事故になる。そういうことが防げるのがメリット」と話します。
また、この位置情報を活用しながら動きや移動する距離を事前にプログラミングすることで、離陸と着陸以外は原則自動運転となります。
一度に運べる種もみの量が3.6キロと限られているため、一往復ごとに種もみを補給する必要がありますが、田んぼに入ることなく、操縦するオペレーターと監視役の最低2人がいれば作業を進められます。
また、今回のように田んぼに直接種をまく栽培方法であれば、農業用ハウスで苗を育てる必要がなくなるので、コストや手間を削減できます。
実験はこれが4回目で、初めは雑草による稲の生育不良で収穫量が落ちましたが、その後は田植え機を使って苗を植える方法で収穫した量と大きく差はありませんでした。
直まき栽培は、国内のコメの栽培面積の約3%と一般的ではないものの、ドローンを使うことでさらなる作業の効率化が狙えそうです。
今回の実験について、県立大学の研究グループは「おおむね順調」と手応えを感じていて、県立大学の西村洋特任教授は「除草体系もいろいろ試すことができたという意味で、安定した直まきの体制をある程度は確保できたかなと思っている。そのあたりの情報を含めて皆さんに伝えて、直まきが県内でも広がっていけるようなことを目指していきたい」と話しました。
この事業は2025年度が最終年度で、県立大学は年度内にこれまでのデータをもとに、ドローンを使ったコメ作りのマニュアルをまとめる方針です。
05月12日(月)19:30