秋田県内各地で田植えが本格化している中、湯沢市ではいま、地元の酒蔵が酒米の苗を植えています。5年ほど前から社員自らが酒造りに使うコメを栽培。コメの価格が高騰する中、酒造りの助けにもなっています。
5月15日の湯沢市の田んぼです。湯沢市の酒造会社・秋田銘醸はこの田んぼで、酒造りに使う「秋田酒こまち」「百田」「一穂積」の3種類の酒米を育てています。
この日は社員7人が、8センチほどに育った「秋田酒こまち」の苗を植えていました。
秋田銘醸の菅春樹さんは「農業をする人たちの高齢化で担い手不足になったときに、自分たちで使う原料米の調達ができなくなるのではないかという危機感があり、始めた」と、社員自らが行う酒米作りのきっかけを話します。
自社で酒米を栽培する取り組みは2021年から始まり、5年目を迎えました。始めた当初の栽培面積は7ヘクタール。いまは約13ヘクタールにまで広がり、収穫量も増えています。
秋田銘醸が酒造りに使用する酒米は、全体の2割にあたる60トンが自社の田んぼで収穫したもの。残りの8割は生産者と契約している加工用米600トンです。
そのためコメの価格上昇に伴い、酒造りも厳しい局面を迎えています。
秋田銘醸の菅さんは「加工用米を作付けしてくれる農家が減っているので、去年より1俵当たり1万円近く上がるという話も出ている。取り合いになると、また拍車をかけて高値になるので大変」とコメ価格の高騰に危機感を抱いています。
酒米の価格は、1俵当たり2024年は1万7000円でしたが、2025年は約1.8倍の3万円に。1万2000円だった加工用米は、去年の2倍に迫る2万2000円に上がっています。
こうした状況の中で、社員自らが田んぼで酒米を作ることは、もはや酒造りに欠かせない取り組みとなりました。
秋田銘醸の菅さんは「コメの価格が高騰すると思っていなかった。取り組みは間違っていなかったと思う。自分たちで作って洗って蒸して醸す酒は形として残るので、世の中に認めてもらえる良い酒になればいいなという思いで酒米を栽培している」と話し、自分たちの取り組みに自信を見せます。
田植えは今週いっぱい続き、秋に収穫された酒米は新酒の仕込みに使われます。
05月21日(水)21:00