経営不振のため事業を停止していた秋田県能代市唯一の酒蔵が、2026年、1年ぶりに再開します。
能代市万町の老舗酒蔵「喜久水酒造」。
蔵の製造責任者として杜氏業務を担っている平澤喜一郎さんは「人気のある商品はたくさんあるが、例えば『亀の舞』は、『亀の尾』というコメを使った酒で、日本でも珍しい部類」と話します。
喜久水酒造は、幻の酒米といわれる「亀の尾」で造った純米吟醸酒『亀の舞』をはじめ、約20種類の銘柄を取り扱っています。
日本の近代化が急速に進む1875(明治8)年に創業した「喜久水酒造」。能代市の数少ない酒蔵として『喜三郎の酒』や『能代』などの銘柄で知られ、旧国鉄時代に使われた鶴形トンネル跡を地下貯蔵庫として日本酒を保管するなど、能代の風土を生かした酒造りで多くの市民や愛好家に親しまれてきました。
喜久水酒造・平澤喜一郎さん:
「コロナで売り上げが激減していたというのが一番の大きな背景。自分の至らぬところではあるが、心が折れた部分があった。つらいことや大変なこと、乗り越えられなかった弱さがあった」
日本酒離れによる売り上げの減少や、原材料価格の高騰などで厳しい経営が続き、2024年11月に事業を停止しました。
明治時代から150年にわたり、脈々と受け継がれてきた喜久水の酒文化。市民や日本酒愛好家から「能代市唯一の酒蔵を残してほしい」という存続を求める声が相次ぎました。
事業継続の道を模索する中で、平澤さんたちに支援の手を差し伸べてくれた企業がありました。それは、同じ能代市万町発祥の「中田建設」でした。
中田建設・中田光専務:
「地域にとって、酒蔵は大きな価値であり財産だと思っていて、能代市民からも『残念』『何とかならないのか』という話をもらっていたので、酒造りを再開できないかというところを考えたのが一つだった」
秋田市に本社を置く中田建設。中田さんたちは「同じ地域に根ざした企業として力を貸したい」という思いから、酒造りにかかる資金の協力や販路の開拓など、平澤さんたちに惜しみない支援を申し出たのです。
温かい支援のおかげで光明がみえた平澤さん。現在は、蔵の再開を聞きつけて集まった能代市民らと共に、操業を止めていた酒蔵の清掃や片付け作業などを行っています。集まった人のほとんどが酒造りに関わるのは初めて。1月から本格的な仕込みを始め、春に向けての販売を目指します。
酒造りの準備が進む中で、平澤さんは2024年まで製造した日本酒などの販売を続けています。トンネル跡を利用した貯蔵庫には、8000本ほどの日本酒が残っています。最後に従業員みんなで仕込んだ2024年の日本酒や20年ものの酒など、ここに来ると喜久水の歴史が蘇ります。
平澤さんは事業を停止した後も、手塩にかけた自慢の酒を地元の酒店などに地道に販売しています。
喜久水の酒を60年以上扱っている市内の酒店「酒のほさか」です。約200の飲食店に酒を販売していて、喜久水酒造の事業停止は衝撃的だったと振り返ります。
酒のほさか・保坂廣樹店主:
「まさか喜久水が店を辞めるとは思わなかった。やはり能代の代表の酒」
多くの人たちが心待ちにしている喜久水酒造の再開。市内への販売が8割を占めている喜久水酒造ですが、今後は全国、そして世界へと販路の拡大を目指します。
中田建設・中田光専務:
「多くの能代市民や、能代を訪れた全国の人たち、全国の色々な所で喜久水の酒が飲めるような舞台を皆でつくりあげたい」
喜久水酒造・平澤喜一郎さん:
「応援してくれる人が多いので、その人たちに報いるように頑張りたい。まずはうまい酒を造る。これが一番の目標」
2026年春に復活する、能代が誇る喜久水の酒。杯を交わす多くの人たちの笑顔を思い浮かべながら、平澤さんたちは着実に歩みを進めます。
01月07日(水)18:00