秋田県潟上市で夏イチゴの産地化に取り組んでいる男性がいます。地域を変え、地域のためになることをやっていきたいと千葉から秋田に移住した男性は今、一般的には公開されることのない栽培データを関係者と共有することで、いち早い産地化を実現しようと意欲を燃やしています。
潟上市昭和の農業用ハウスで花が咲き始めた作物、夏イチゴです。
この夏イチゴは、NTT東日本の子会社、NTTアグリテクノロジーが栽培に取り組んでいるもので、中心となっているのが中戸川将大さんです。
NTTアグリテクノロジー・中戸川将大さん:
「クラウン(親株の株元)の太さが、親指くらい太くなってくると生育が良いということ。今年はかなり太くできているので生育は順調で、去年よりも良いと思う」
夏から秋にかけてが収穫時期の夏イチゴ。一つの苗から約75個の果実が採れ、7月中旬から11月までは毎日収穫できるようになります。
元々はデータや情報技術を活用した「スマート農業」を推進する事業を担当していた中戸川さん。秋田県内のイチゴ生産者とスマート農業の実証を行っていく中で、生産・販売の重要性を強く感じ、2022年に家族とともに千葉から秋田への移住を決めました。
中戸川将大さん:
「秋田で何か実証をやろうというと、NTTが来ていっときだけ実証をやって帰っていくイメージを持たれる人が多くて、そうであれば自分がしっかり腰を据えて地域を本当に変えたい、地域のためになることをしっかりやっていきたいという思いで移住した」
農業は未経験ながら、2024年4月に夏イチゴの栽培をスタート。現在は2棟の農業用ハウスで夏イチゴ2品種を栽培していて、計2.7トンの収量を目指しています。
中戸川さんは、秋田の環境は夏イチゴの栽培に適していると感じています。
中戸川将大さん:
「秋田県は夏場暑くなるが、日中は暑いが夜になると気温が大幅に下がって寒暖差がうまくできる。風が強くてエアコンがなくても涼しい状態をつくれる。秋田県の地の利を生かした栽培で夏イチゴは適している」
国内で生産されるイチゴは、通常11月半ばから6月ごろにかけて収穫するため、夏には出荷量が極端に少なくなり、多くを輸入に頼っています。
夏場に市場に供給できるイチゴの生産地を目指して、県内では2023年から生産者とNTT東日本グループが連携し、夏イチゴ『秋田夏響』のブランド化を進めています。
2025年4月には、県産の農産物を使った加工品の開発・販売などを手がける会社が『秋田夏響』を使った商品の販売を始めました。
また、行政も夏イチゴの産地化に向けて支援に乗り出します。県は2025年度の補正予算案に、新たに「夢ある秋田産食料供給力向上支援事業」として5000万円を計上していて、対象品目には夏イチゴが含まれています。
産地化に向けての動きが活発になっている中、中戸川さんは栽培マニュアルの公開を進めています。
『秋田夏響』は、2021年に誕生した新品種『夏のしずく』をブランド化し名付けたもので、栽培方法がまだ確立していません。
中戸川さんは、生育環境や作業の記録を秋田夏響の生産者をはじめ、県や潟上市、県立大学などに公開しています。2025年度中には県を通じて栽培マニュアル動画も公開する予定です。
中戸川将大さん:
「今までだとデータを公表しないのが一般的だと思うが、秋田県を産地にしていくには、1人でやっていくと1年で1回しかデータが取れない。データを公開してみんなで知見を集めていけば、1年で何十回栽培したのと同じ効果を出すことができるので、最速での産地化を目指せると判断して公表している」
誰でも一定の品質を保って生産できるように栽培マニュアルを普及させ、秋田を夏イチゴの産地にする。秋田ブランドの発信に向け、勝負の2年目を迎えています。
NTTアグリテクノロジー・中戸川将大さん:
「販売分野においても県内の皆さんの期待に応えられるような取り組みもそうだが、県外、海外と販路を広げていくことによって『秋田夏響』というブランドを秋田県を代表する作物にしたい」
『秋田夏響』は甘さと鼻に抜ける酸味があり、フレッシュで爽やかな味わいで、2025年は加工品だけではなく、生食用の販売も検討しています。
06月13日(金)20:30