2025年も残りわずか。2025年の出来事をキーワードで振り返ります。今回は『危機』。秋田県内は度重なる大雨に見舞われました。爪痕が色濃く残る一方で、少しずつ日常を取り戻し始めています。
8月、県内は記録的大雨に見舞われました。仙北市の桧木内川など6つの河川が氾濫し、6つの市と村で106棟の住宅被害が確認されました。このうち36棟と最も多くの被害が出たのが仙北市です。
仙北市西木町上桧木内地区の住民:
「桧木内川の河川改修をやってからこうなってしまった。想像を絶するような初めての災害」
石川萌恵子アナウンサー:
「仙北市西木町の上桧木内地区。この地区を流れる桧木内川が氾濫し道路が冠水している。そして広場も水で覆われている」
県内を代表する冬まつりの一つ『上桧木内の紙風船上げ』の会場は、景色が一変しました。
9月、8月の記録的大雨から1カ月もたたないうちに再び大雨が県内を襲いました。24時間に降った雨の量が北秋田市、大館市、能代市など6つの観測地点で観測史上最大となりました。
立川愛梨アナウンサー:
「五城目町の内川地区。内川川はすでに氾濫していて、奥の住宅にまで水が流れ込んでいる」
五城目町では内川川が氾濫し、多くの住宅が浸水被害に見舞われました。
また、秋田市や能代市などで18の河川が氾濫し、8つの市町村の住宅271棟が被害に遭いました。
各地で甚大な被害が発生した8月からの度重なる大雨は、激甚災害に指定されました。
甚大な被害を受け、支援の輪が広がりました。仙北市では浸水被害が発生した直後から災害ボランティアセンターが設置されました。
ボランティアには全国から延べ約850人が駆け付け、住民の新たな要望がなくなるまで約2カ月間活動を続けました。
大雨は基幹産業である農業にも大きな打撃を与えました。8月から9月にかけての大雨による農林水産関係の被害額は約100億円で、その半分の50億円余りが田んぼの被害です。
仙北市西木町上桧木内地区であきたこまちを生産する若松章二さんの田んぼは、所有する5ヘクタールのうち4ヘクタールが冠水し、多くの稲が横倒しになりました。さらに土砂が流れ込んだほか、用水路が崩れました。
被害に遭ってから約4カ月。12月14日に訪れた際は、田んぼはすっかり雪に覆われていました。
被害を受けた後、ボランティアの力を借りて土砂や流木を撤去し、稲刈りは9月中旬に始まりました。
残った土砂などを取り除きながら刈り進めたため、例年の3~4倍もの時間がかかりました。
若松章二さん:
「いくらでも取れただけは出荷しなければいけなかったが、収量は例年に比べて55%程度」
「ある程度刈り取れて良かった」と話す若松さんですが、営農の継続には多くの課題が残されています。
若松章二さん:
「ことし被害に遭ったところは来年は作付けできない。災害復旧事業に出したので。2027年は作付けできるようになると思うので、何とか頑張って次の年に期待している」
2026年は、川の反対側の高台や下流の冠水しなかった約1.5ヘクタールで作付けする予定です。
若松章二さん:
「集落とボランティアの方々のおかげで水に流された田んぼを刈り取ることができたと思っている。本当にありがたく思っている。今後こういうことがないように祈っているだけ」
大雨は地域の伝統行事にも暗い影を落としました。天に声が届くようにと願いを込めて風船を打ち上げる小正月行事『上桧木内の紙風船上げ』です。
会場は冠水などの被害が出たものの、保存委員会は予定通り2026年2月10日に開催することを決めました。
紙風船の制作は、約2カ月前の12月から始まります。9日は保存委員会のメンバーなどが集まって紙を裁断して文字を書き、色を塗る作業を進めていました。
まつり当日は、町内8つの集落と保存委員会が作った紙風船が打ち上げられます。
被害が大きかった集落は多く作ることが困難なため、打ち上げの数は、例年約50個なのに対し、今回は40個に届かない見通しです。
上桧木内紙風船上げ保存委員会・阿部明雄会長:
「8つの集落があるが、4つの集落で被災した。その集落では作る個数が少なくなるが、それはやむを得ないこと。他の集落で1個でも多く作りたい」
多くの人の願いをのせて打ち上げる紙風船。今回は地域が一つになり、ボランティアに感謝の思いを伝えるものにもなります。
上桧木内紙風船上げ保存委員会・阿部明雄会長:
「このような大きな水害は初めてなので、全国各地からボランティアに来てもらい、協力・支援などをもらって本当に助かっている。そういう方々に感謝の気持ちを込め打ち上げたい」
夜空を照らすやさしい光は、地区の日常をまた一つ取り戻す重要な役割を果たします。
12月15日(月)19:00