8月の大雨で秋田県仙北市では桧木内川が氾濫し、西木町を中心に大きな被害が出ました。この被害で営業休止を余儀なくされたのが「なか志ま旅館」です。あれから約3カ月。ボランティアなどの支援を受けて復旧を進め、旅館と併設する食堂が11月10日、再開の日を迎えました。食堂には早速多くの人が訪れ、温かい食事を味わっていました。
仙北市西木町上桧木内で旅館と食堂を営む「なか志ま旅館」です。この地区でただ一つの宿泊施設と飲食店が10日、再開の日を迎えました。
「うれしい。みんなが気軽に来られるような場所になってほしい」――こう話すのは、なか志ま旅館を切り盛りする中島勝子さんです。
ここに至る道のりは決して平たんではありませんでした。
旅館は8月の大雨で床上70センチまで浸水。ボランティアの力を借りながら厨房の床を剥がし、床の下にたまった泥をかき出し、懸命な復旧作業を進めて当初の予定より早い約3カ月ですべての再開を実現させました。
冬の足音が近づき始めた10月2日。中島さんは仙北市角館町を訪れました。食堂再開を前に、仙北市社会福祉協議会が開いたイベントで料理を振る舞いました。
提供したのは、かつ丼・焼き肉丼・いなり寿司。中島さん自慢の3品です。
訪れた人:
「勝子さんの料理はおいしい。料理を目指してきた。オープンするの楽しみにしている」
中には、日本赤十字東北看護大学介護福祉短期大学部の及川真一さんの姿もありました。及川さんは、被害を受けた直後からボランティアで上桧木内地区を訪れ、中島さんとともに旅館の再開を目指してきました。
料理を口にした及川さんは「うまい。良かったね」と話し、中島さんは「みんなのおかげだな」と感謝の言葉を口にしました。及川さんは「ママの頑張りだ」と中島さんの努力も労いました。
用意した150食はあっという間に完売。中島さんは「働くのが好きなので面白かったし楽しかった」と笑顔を見せました。
一方、旅館は再開の準備が大詰め。再開を1週間後に控えたこの日は、食材の仕込みに加え、のれんやのぼりの準備に追われていました。
なか志ま旅館・中島勝子さん:
「どういうふうになるのか楽しみ。やっていけるのかいけないか。どのくらいお客さんが来てくれるのか」
そして、ついに迎えた再開の日。食堂のカレンダーに目を移すと、雨が降り始めた8月19日のままです。
勝子さんの娘の星子さんは「カレンダーはとりあえずめくらないことにした。なんとなくまだめくれない」と複雑な胸の内を口にしました。
「準備万端。80%できました」と話す勝子さんの表情にも少し緊張が見えました。
いよいよ開店。食堂には再開を待ちわびた客が次々と訪れました。
メニューはラーメンやかつ丼など10種類。訪れた人は、温かい食事をゆっくりと味わっていました。
訪れた人は「最高。思い出した。ここは憩いの場所」「みそ漬けがすごいおいしくて、来るたびに買っていた。料理がおいしい。復活してもらって良かった」と再開を喜んでいました。
なか志ま旅館・中島勝子さん:
「みんなに協力してもらって、できるだけ長く続けていきたい。ほんとのほんとにみんなに感謝。みんなのおかげでここまで来た。私1人では何もできないのでみんなに助けられた」
日赤東北看護大短大・及川真一さん:
「ここからがスタートであり、まだまだ仙北市で起きた出来事を多くの人に知ってもらうことをしていかないと駄目だと思う。仙北市のことを皆さんが注目して、町の再生・復興を見届けてほしい」
11月11日(火)18:00