8月19日からの大雨から1カ月余り。大きな被害が出ている秋田県仙北市西木町上桧木内では、復旧と生活再建に向けた活動が続いています。
9月28日に開催された100キロチャレンジマラソンのルートの一部となった上桧木内地区。住民は、ボランティアなどの支援に恩返しがしたいと、ランナーやスタッフに温かい食事を振る舞いました。被害に遭った旅館はエールを受け、営業再開に向けた一歩を踏み出しました。
◆ボランティアの支援に“お返し”を◆
8月19日からの大雨では、106棟の住宅が浸水などの被害に見舞われたほか、農林水産関係の被害額は47億円余りに上っています。
仙北市西木町では桧木内川が氾濫し、上桧木内地区を中心に大きな被害が出ています。
9月28日午前4時。夜が明ける前のこの地区で、一つの建物に明かりが灯っていました。創業約100年の「なか志ま旅館」です。3代目女将の中島勝子さん(83)が、調理場で手際よく調理を進めていました。
なか志ま旅館は大雨の際、床上70センチまで浸水しました。旅館に併設する食事どころは、厨房の床下に泥がたまったほか、調理道具や家電などが水に漬かったため営業を停止。全国からのボランティアの支援を受け、再開を目指しています。
先日は業務用の調理器具を譲り受け、再開に向けて明るい光が差し込みました。
なか志ま旅館・中島勝子さん:
「みんなからお見舞いをいっぱいもらった。ボランティアも来て手伝ってくれた。それがなかったら、こんなに早く復活できなかったから『何かでお返しを』と考えた。いつも紙風船館に店があったがことしはない。いつも応援に来る人の休む所がないと思ってやろうかなと」
◆温かい食事で“感謝”伝える◆
「助けてもらった恩返しを」と考えた中島さん。仙北市角館町から北秋田市鷹巣を目指す100キロチャレンジマラソンの応援に来た人たちに、感謝の食事を振る舞うことを決めました。
「大雨の後、厨房を使ったのはきょうが初めて。ようやく一歩だな。まだ全部はできないが」と、大会当日の28日未明に作業を開始した中島さん。
地元の農家から譲り受けたあきたこまちの新米のおにぎりと、地元でとれたマイタケと山菜が入った味噌汁を作りました。
そして午前6時半過ぎ、地区の紙風船館前にランナーが見え始めました。
中島さんはテントを立て、仲間たちとそれぞれ持ち寄った料理を応援に来た人やスタッフに振る舞います。
「おつゆも食べて」と声をかけて味噌汁を手渡した中島さん。岩手から応援に来た人は「おふくろの味。皆さんの心のこもった味がする。おいしい」と笑顔を見せていました。
◆ランナーからのエール 復旧の後押しに◆
おいしそうな匂いに誘われたのか、ランナーも次々とテント前に集まりました。
中には「頑張ってください。桧木内、応援してます」「ありがとう。水害に遭ったのにありがとうございました」と、中島さんたちを応援するランナーの姿もありました。
たくさんのエールは、旅館の再開に向けて大きな力となったようです。
なか志ま旅館・中島勝子さん:
「1カ月前は想像できなかった。やる気もなかったし、やるつもりもなかった。だんだん片付いてきて、周りも応援してくれるからだまっていられない。旅館をやらないと駄目だなという気持ちになった。応援する人を応援して、自分も応援されて、やって良かったと思う」
なか志ま旅館は11月に併設する食事どころの再開を目指しています。
09月30日(火)18:00