▼ 2011/08/10(水) 南極の湖の物語 エピローグ1
みなさま、ご無沙汰しておりました。私たち第51次日本南極地域観測越冬隊員たちは、東日本大震災のニュースをはるか南極海の真っただ中で知り、南極以外で生じた自然がもたらした「想定を超えた」災害の過酷さに驚き、また、人間が自らの利便性を追求し英知を結集して作り上げた原子力発電所の事故発生に心底「大丈夫なのだろうか?」と心配したのでした。
直接・間接的に被災された方々、復旧に日々努力している方々、また、放射性物質漏えいという「悩ましい」問題を抱えてしまった事故現場周辺並びに我々日本国民は、この先、「いかに生き続けるのか?」その方策と方向を巡って、問題解決にともに歩まなきゃ、いけないと思いながら、私は日本での仕事・生活を始めています。
いやあ、それにしても「暑い!」
さすがに南極越冬帰りだと、この夏の暑さは身にこたえます。南極で仲間とともに湖の調査に山野を歩き回り、-20度前後の中でのどの渇きを潤すべく、厚く張りつめた湖氷の上に積もった雪にカルピスやシロップをかけてむさぼった事が、とても懐かしく思えます。
ところで、雪にシロップをかけて食べる、という、ちょっとワイルド?なことは、ここ、日本の雪国でもごく普通にできることではあります。ただし、南極でやるそれと、日本でやるそれとは「味わい」の点で多少異なるものです。
第一に、日本の雪でやると、どうしても「ほこりっぽさ」を感じてしまうことが多いことです。雪の結晶が純粋に水でできたものなら、そうした違いはないのでしょうけれど、残念ながら日本では、雪の結晶ができるときに空気中の塵やほこりが取り込まれたようなもの(ひどい時には黄砂みたいなものが含まれたものもありますねえ)になってしまいます。南極の周りには文明圏を持った大陸もなく、また、南極大陸自身もほとんどが雪と氷で覆われていますから、大気中の塵やほこりが極度に少なく、そうした清澄な空気の下で出来上がった雪ですから、雪自身にほこりっぽさを感じさせるものを含まないのです。
第二に雪の固さというか、雪の粒の詰まり方が絶妙だということ。南極は、別名、「風の大陸」でもあります。雪が穏やかに降り積もることもごくまれにありますが、ほとんどが台風並みの強さの風と共にブリザード状態で吹き付けます。この強い風が叩きつけるように雪を吹き固めますから、雪に足が埋まって歩きにくいような状態は、実はあんまりないのです。固くしまった雪が風で削られて湖の氷や大陸氷床上で「サスツルギ」という雪の造形をつくりだしたりもします。こうして吹き固められた雪は適度な粒子の粗さと空気の混合具合を示し、シロップをかけると絶妙のシャーベット状態をつくります。
いかがです?南極で「天然雪シャーベット」
味わってみませんか?

